この社会が残酷だということを僕は知っていた。
ここのところ職場で「うつ病」など、精神疾患を理由に仕事を休む人が増えている。
今流行りの「ブラック企業」ってやつかというとそういうわけではないと思う。
僕が働いている職場には理不尽なことを言う人はいないし、厳しいノルマがあるわけでもない。
にも関わらず、なぜか彼らは精神を病み、自ら職場から姿を消してしまう。
だが、なぜ彼らが精神を病んでしまうか、僕には分かっている。
彼らに共通するものはなんだろうか。
それは「頭が悪い」ということである。
身も蓋もない話だが、事実そうなのだ。
頭が悪いが故に、いつまでたっても会社で求められている水準にまで仕事ができるようにならない。あるいは頭が悪いが故に、その場の空気が読めず的外れな言動で自らの立ち位置を危うくしてしまう。
そして、徐々に周囲からの風当たりが強くなっていく、あるいは相手にされなくなっていく。そして最終的に精神を病んでしまう。
頭が悪いが故に、仕事が出来ず、仕事ができないが故に、精神を病んで職場に来なくなる。周囲の人間からの風当たりが強くなり、ますます精神を病んでしまい仕事が出来なくなる。そのような出口のないループに絡めとられている。
「それは職場環境が悪いから、そういうことになるんだ」と言うことはいくらでもできる。
だが、おそらく彼らはどこの会社に勤めても、つまづくことだろう。
全ての問題の根本は「頭が悪い」というところにあるからだ。残念ながら、頭の悪い人間はどこの職場からも必要とされていない。逆に言えば頭さえ良ければ彼らは、そんな精神疾患になったりはしなかっただろう。
だが、僕がどれだけ努力をしたところでファインマンやガリレオ、羽生善治にはなれないように、彼らもまた、持って生まれた悪い頭を良くすることはできないだろう。
職場には誰一人彼らに対して同情する人間はいない。頭の悪い人間は死ぬしかないのだろうか。

- 作者: 久保田競
- 出版社/メーカー: アスキー
- 発売日: 2006/03/24
- メディア: 単行本
- 購入: 18人 クリック: 216回
- この商品を含むブログ (40件) を見る