実りある読書をするには、むしろ実利をあまり求めすぎない方がいいのではないかと思います。
せっかく本を読むのだから、読んで得たものを自分の成長としてアウトプットできるようになりたいという気持ちが分からないわけではありません。
ですが、こういう人は、本を読むことで得られる実利を過剰に意識しています。
皮肉なことに、読書という行為に損得の概念を持ち込む人は、実はあまり得をしていません。
ガイドブックや地図といった、本当の実用書は例外として、本はメリットを考えずに読むほうが身になります。
というのも、人は、「自分にとって何が役に立っているのか」をそんなに簡単に想定できないものだからです。
それなのに、すべての本に対して「これは使える」「これは使えない」という縛りをかけるのは狭量というものです。
そもそも、何をもって「価値のある本」「無価値な本」と判断し、「良本」「駄本」とするのでしょうか。
それに僕は、読んだ本の内容を忘れても構わないと思っています。
読書において重要なのは、本を読んで頭に詰め込むことではなくて、読むことで衝撃を受け、自分の内部に精神的な組み換えを発生させることです。たとえ読んだ内容をほとんど忘れていたとしても、何かを考えたり、アイデアをひねり出す時に、それまでに読んだ本が必ず影響しています。無意識のうちに確実に自分の血肉になっているのです。
また、仕事に直結するような専門分野の本を繰り返し何度も読んでいるばかりでは、視野が広がりませんし、誰もが考えるような凡庸なアイデアしか生まれません。
例えば、新しい家電製品のプランを立てているとして、専門分野の本ばかりを読んできた人は、過去の家電を真似したものか、せいぜい多少発展させたようなアイデアしか出すことができないでしょう。
あらゆるジャンルの本を大量によむことで、脳のあらゆる部分を刺激した方が、感性が磨かれます。様々な情報を自在に組み合わせることで、斬新なアイデアが浮かんでくるようになるのです。

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