僕が勤めている会社は、慢性的な人手不足なため、門戸が非常に広い。
だから、言い方は悪いかもしれないけど、労働者として普通じゃない人もたくさん入社してくる。
中には、一度自ら内定辞退しておきながら、気が変わったのか、再度採用してくれと連絡をしてくる兵もいる。(さすがに断ったそうだ)
とりわけ多いのが、1日で仕事を辞める男である。
これが一見、人当たりのよさそうなごく普通の青年なのだが、次の日を迎えて会社に来てみると彼らの姿はもうそこにはない。最短距離を駆け抜けていくのだ。
これはいったいどういうことなのだろうか。
1週間や1か月で辞めるとかなら、まだ分かる。とはいえ本来ならそんな輩は面接の時点で弾くべきで、そんな不毛なことはあってはならないことなんだろうけど、まあ、実際に仕事してみたらなんか合わなかったってのはよくあることだから全く理解できないわけではない。
でも、1日で辞めるってなんなの?なにしにきたんすか?って感じ。
1日じゃ何も分からないだろうに。
失業保険目的であれば、面接して受かっても辞退すればいいだけだし、なんであえて入社して、わざわざ各種手続きを済ませて、1日だけ来て来なくなるのか。ほんと意味が分からない。
お互い、無駄な労力と時間の浪費でしかない。
たいていドロンが多いのだが、今回は退職理由を聞くことができた。その理由も実に面白いものだった。
なぜ辞めたいか。それは「給与が安いから」というものだった。
給与に関しては求人票にはっきり分かりやすく明記してあるし、実は残業代が出ないなどというトラップがあるわけでもない。
にも関わらず、1日で退職したい理由が「給与」って。
じゃあ、なんで応募したの?って話になる。このくらいの給与だと分かってて応募したんだよね?って話になる。
さすがにこんな無計画な理由は頭が悪すぎるので、とにかく雰囲気が嫌でただ辞めたかっただけなのかもしれない。
つきっきりで仕事を教えていた同僚が不憫で仕方がないけれど、採用しているのは僕じゃないのでどうしようもない。
ただ、秒速で仕事を辞める男たちがこの先いったいどんな末路を歩むのか、そこに少しだけ興味がある。

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